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遺産分割における株式の評価

2025.03.10

第1、事案

 被相続人(A)が死亡し、相続人が長男(B)、次男(C)の子供2名です。被相続人(A)は生前、株式会社で建設業の経営を行っており、遺産の大部分はその会社の株式が占めます。

 相続開始後、共同相続人の長男、次男で遺産分割協議をした際に、株式の評価について意見が対立しています。

 この場合、株式の評価はどのように判断されるべきかが問題となります。

 

第2、上場株式の場合

 相続財産の株式が上場株式の場合は、証券取引所による株式の価格となるため、当事者間で株式の評価が争いになることはありません。

 なお、株式の評価基準時点については、相続時(死亡時)か、遺産分割基準時かで争いがありますが、遺産分割時点で判断されるべきという見解が通説なので、遺産分割時の上場株式の株価で判断されることとなります。

 

第3、非上場株式の場合

 非上場株式の場合の株式の評価については、どのように判断がされるべきでしょうか。

 非上場株式の評価方法については、

①純資産方式(ネットアセットアプローチ:評価対象会社の純資産額を算定し、発行済株式総数で割ることにより株価を算定する方法。純資産額について、貸借対照表上の純資産の帳簿価格に拠るのか<簿価の純資産>、不動産評価など時価に引き直して純資産を評価するのか<時価の純資産>手法が分かれます。)

②収益方式(インカムアプローチ:評価対象会社の株主が将来受け取る配当、または、会社の将来予測される売上額に基づいて株価を算出する方法。DCF法など。)

③比準方式(マーケットアプローチ:過去の取引事例や同業他社の株価を参考に株価を算出する方法。)

があります。

 

第4、税務上の評価基準

 税務上の評価基準については、原則、国税庁の相続税財産評価基本通達によって株価を算定します。

 国税庁が定める財産評価基本通達の上場株式の評価では、会社の従業員数や取引規模に応じ、①純資産価格方式(会社の純資産額を発行済株式数で除して評価する方法)、②類似業種比準方式(評価対象会社と業種や規模等が類似する公開会社の株価等との比較により株式を評価する方法)、③配当還元方式(会社の配当金額を基準とし、これを発行済株式数で除して評価する方法)が採用されます(複数併用方式もあります。相続税法上は、同族会社の場合は、大会社は類似業種比準方式か純資産価格方式、中会社は類似業種比準方式と純資産価格方式の併用方式、小会社は純資産価格方式となります。同族会社によらない場合には、配当還元方式によるとされています。)。

 

第5、遺産分割における株式の評価

 遺産分割における非上場会社の株式の場合はどのように評価されるべきでしょうか。

 遺産分割においても、便宜的に相続税申告書に計上されている非上場株式の税法上の株式評価額で評価する場合もあります。

 ただ、税法上の評価は、あくまで相続税課税を画一的・政策的にするための通達にすぎず、遺産分割における非上場会社の株式評価が税法上の株式評価と一致するわけでは無いため、独自に判断する事案も多いと考えます。

 東京地裁平成10年5月29日判決:判例タイムズ1002号144頁は、土地保有特定会社の株式価格の評価については、純資産方式に着目した評価方法を採用するのは不合理といえないとしました。

 遺産分割の調停や審判で、株式の評価額が大きく争われた場合は、裁判所の手続きの中で、鑑定人である公認会計士が株式の評価について鑑定し、判断する場合が多いですが、その場合は鑑定の費用や時間がかかるという問題もあります。

 いずれにしても、遺産分割において、株式の評価をめぐり当事者間で争いが生じた際は、弁護士、公認会計士、税理士等の専門家にご相談されることをお薦めいたします。

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柳沢 賢二
柳沢法律事務所
弁護士

一、弁護士として、依頼者のために、一つ、一つの案件について、専門家としての①専門性の高いサービスを、②迅速に提供することを心がけています。そして、常に依頼者のために、一つ一つの案件を全力で取り組んでいきます。

二、今、高齢者社会において、相続の問題は誰もが直面する重要な問題だと思います。今までの自分の人生の集大成を納得のいく形で終えれるように、残された家族の方々が困らないように、専門家として皆様の力になれる適切な解決方法の提案やアドバイスをしていきたいと思います。

三、相続の分野でも、紛争後の裁判所での訴訟業務だけでなく、紛争を事前に防ぐ予防法務的な視点から、遺言書の作成、任意後見・成年後見の活用、事業承継のアドバイスなどにも力をいれ、皆様の力になれるアドバイスをしていきたいと思っています。